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出かけよう 「ゼロイチ、遊びいこっ」 「行きたいんなら一人で行け。その方がこっちも助かる」 零一の部屋で交わされた会話。 「一人で行ったって意味ない、つまんないっ」 そう言って秋は手に持っていた造花を床にペシッと置いた。否、投げた。 「あっ、てめ秋！ 花がとれたじゃねぇか！」 零一は、秋が投げた花が茎と花とに分かれてしまったのに気がついて怒鳴った。 「あれ？本当だ。僕ただ置いただけなのに。コレ安っぽいんだね」 「あれのどこが置いただけだ！ たたきつけたって言うんだよ！」 「そんなことより、遊びに行こうよ」 秋は零一の罵声を気に留めることなどしない。 「俺は見ての通り忙しい」 こんなやり取りはいつものことだ。 秋と会話をしながらも、零一の手は休むことなく動いている。 「何でこんなことしてるのさ。今日は土曜日だよ？ せっかくバイトも休みなのに」 「バイトがないからやってるんだ」 目線は自分の指先。 「……この貧乏人！ あー、つまんない〜」 秋は足をバタバタさせてわめいた。 「うるさい、おまえ何歳の子供だ？ つまんないんだったら帰ればいいだろ。リベザルと遊んでやれ」 「小坊主さんとどっかに行ったみたいだからそれはムリ。ぅん？ 小坊主さん？ ときたら――あ！ 直也！」 突然立ち上がったかと思うと、玄関へ駆けていった秋。 「どこ行くんだ？」 一体なんなのかと気になって、零一は顔を上げて問いかけた。 「直也んとこ。きっと今日はバスケやってると思うんだ。じゃあねゼロイチ、がんばって」 そこで秋の声は途切れ、バタンとドアの閉まる音が聞こえた。 「おいっ！ ……いや、これでいいんだ。あいつがいたってうるさいうえに花壊すだけだし……」 秋が出て行き一人になった部屋で、誰に言うでもなく喋りだす。 「だいたい、なんでいっつも俺のところに来るんだよ。しかも意味分かんないこと言ってくし、こっちはいい迷惑…だ…」 虚しいのでやめた。 「はぁ……」 ため息をついてから、一体これは何のため息なのかと思った。 「ただいまゼロイチ」 「うわっ秋！？」 あれからどれくらい経ったのだろうか。 いきなり後ろから声がして零一は驚いた。 「驚きすぎだよ」 零一の後ろには、さっき出て行った秋が立っている。 「おまえ、直也……のところに行ってたんじゃないのかよ」 「ちゃんと行ってきたよ」 「で、なんでこんなに戻ってくるのが早いんだよ」 「早くないと思うけどなぁ。――直也、用事ができちゃったんだって」 「へー」 適当に返事を返す。 「そ・れ・で！」 「な、なんだよ……？」 「これ見てコレ！」 零一の後ろにいた秋が前に来て、両手でつかんでいる何かを前に出した。 「あ？ なんだよこれ……」 「あれ、ゼロイチ字読めないの？ ごめんね、難しかったか」 「ふざけんなっ、読もうとしてないんだよ！ 嫌な予感がする」 当然怒鳴ってから、零一はふいっと顔をそむけた。 「あ、そ。じゃあ僕が代表して読んであげる」 「なんの代表だ」 零一のつっこみをさらりと流し、秋は声に出して読み上げる。 「フレンド シー水族館の入館料タダ券！！ 1枚につき2名様まで！」 「…………」 「行こうよ。ねー、ゼロイチぃ」 秋は零一の腕をつかんで言った。 「やっぱりな……」 ガクンと頭を垂らしてつぶやく零一。 「おまえ、秋……こんなのどこで手に入れたんだ？」 「直也からもらったんだよ。福引で当たったんだってー。でも直也は用事できちゃったし、よかったら好きな人と行ってって」 秋は嬉しそうにタダ券のいきさつを話した。 「俺はいい。おまえ一人で行って来い」 「そんなの意味ないんだって。一人で魚見て楽しい？」 「さぁな」 「ホラ、楽しくないじゃん。だから行こうよ、ねっ！ ゼロイチが絶対行かないって言うんだったらザギ誘うけどさ」 そう言って零一の腕から離れた。 それを今度は零一がつかんだ。 「絶対行かないとは言ってない」 「たまには休みも必要なんだよ、ゼロイチ」 にっと笑って秋が言った。 「そうかもな」 休みは誰にだって必要なものです。 -------------------------------++ ゼロイチとお出かけしたい秋ちゃんでした。 うちのゼロイチはバイトとかやりすぎな気が…。だから秋ちゃんが気分転換にと（笑） てか直也が福引？！ なんで福引？！ 多分、総和さんに「この際だから直也もやりなさいよ！」って感じで。 これもおかしいですね（汗） [2004/5/23] |
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