もう知らない!

 

 

「ねぇシリウス……。さっきから何? 気が散るんだけど……」

ベッドの上で読書をしていたリーマスは、読んでいた本から視線を上げ、こちらをじーっと見つめているシリウスを訝しるように見た。

「ん、いや、別に。どうということはないけど」

 サッと視線をそらして言うシリウス。

「そんなのウソ。ずーーっとこっち見てるから気になってホラ、本のページが三十分で五ページしか進んでないよ。まったく……何か用があるなら言ってくれていいよ?」

 リーマスはペラペラとページをめくって、軽くため息をついてみせた。

「用っていうか……」

「何?」

「いやその、リーマスがこっち向いてくれるのを待ってたんだよ」

「何それ」

 リーマスは怪訝そうにシリウスを見た。

 シリウス・ブラックという男は時々、何を考えてそうしているのか分からない行動をとることがある。今回もそうだ。

「向いてほしいのなら一言名前を呼べばいいだけじゃないか」

「だって、リーマス真剣に本読んでたし……」

「どうせ進んでなかったんだけどね」

「悪かったな……?」

 シリウスはなぜか疑問形で謝った。

「別にいいよ」

 その疑問形での謝罪に、リーマスはハァとため息をついて答えた。

「あ、でなんなの? 今僕シリウスの方向いてるけど……。今のうちだよ?」

 と、穏やかな声がシリウスに届いた。

「あぁ……やっぱリーマスはいいな……」

「は? 何が」

 シリウスはボーッとした感じでリーマスの顔をじっと見つめていた。というかもう、リーマスに見とれていると言った方がいいように思える。

――好きだリーマス」

「なっ……」

 急に何を言い出すのかとリーマスはギョッとした。しかもその次の瞬間に、リーマスの華奢な体はシリウスに抱きしめられていた。

「し、シリウス? 急に何す……」

 抗議の言葉はシリウスの口によって封じられてしまった。

「リーマス……」

「シリ…っ……ん……ちょっ…」

 抗議の言葉はことごとく消されてしまう。

 貪るような激しいキス。

「……ん……ふっ……ッ」

 全く緩むことのないそれに、息苦しさと“恐怖”という気持ちも混ざってしまい、リーマスの目にはじわじわと涙が溜まってきてた。

 どうにかして逃れようと必死でシリウスの胸に手を当て押しやっても、もうまともに力が入らず、元から力の差がありそうな相手はびくともしなかった。

 そして体に体重がかかって傾いたと思ったら、押し倒されてしまっていた。

「!? シリ……ウス……ッ!」

 今のシリウスにリーマスの声が届いているのか疑わしい……。

 邪魔だと言わんばかりにネクタイを緩め、第一ボタンをはずした。

 リーマスの口からだんだん下に下りて来たシリウスの唇は、リーマスの白い首筋に強く押し当てられる。

「……ッ」

 リーマスはぎゅぅっと目を瞑っていて、必死でこらえているようだった。

「……ッいやだ……こんなっ……シリウス!!」

 パンッ

「う…」

 はじかれたような音がして、シリウスの動きがようやく止まった。リーマスが力を振り絞って腕を伸ばし、シリウスの頬をおもいっきりビンタしたのだ。

 やっと解放されたリーマスの、鳶色の瞳からは涙がポロポロと零れ落ちていた。手で横に払うようにぬぐっても、次から次へと溢れてきて止まらない。

「り……リーマス……」

 シリウスはハッとして恐る恐る名前を呼んだ。

「俺…、わ、悪かっ――」

「シリウスの馬鹿ッ!!! もう知らないっ!!」

 リーマスは止められない涙を流したまま叫んで、走って部屋を出て行ってしまった。

 その後姿を追いかける事ができなかったシリウスは、絶望的な表情をして立ち尽くしていた。

 そろそろと上げた手を思いっきり引っぱたかれた場所に当てると、涙を流して怯えた表情のリーマスの姿がハッキリと蘇ってきた。

「リーマスを、傷つけた……」

 

 

 

 

 



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お題一発目。なんの意味もない、オチもないという……。
終わり方が微妙で、なんとなく続きそうな感じ。
まだ考えてないけど、暇があったら書きたいなぁと。
2004-11-15


リーマスごめんな……

 


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